2コメント

【DVD鑑賞】アルキメデスの大戦

アルキメデスの大戦
 制作年  2019年
 監督   山崎貴
 出演   菅田将暉、舘ひろし、柄本佑、浜辺美波、田中泯、橋爪功、
      笑福亭鶴瓶、小林克也、小日向文世、國村隼ほか
 劇場公開 2019年7月
 録画日  DVD形式 2020年1月15日
 鑑賞年月 DVD鑑賞 2021年1月


 予告編を観ながら「どうしようかな」と少し迷った作品。
結局、劇場に行かなかったのは好きな女優が出ていなかったからか、あるいは菅田将暉の青臭い芝居を見ても仕方がないと思ったからか…
でも妻はファンらしく劇場に出かけていた。

予告編を観たときは「反戦映画なんだろう。大和建造を阻止しようとした男がいたという願望の作品なのかな」と思っていた。
あの戦争を止めようとした男が軍内部にもいたのだという願望、いて欲しかったという願望が強く反映された作品なのだろうと高をくくっていた。
録画から鑑賞まで1年も経過したのは、それが理由だったかも。
大和はが建造されたことは事実、果たして願望の充足はどう落とし前をつけるのか?
DVD鑑賞時の興味は、もっぱらコレであった。

建造された大和型選管は、「大和」、「武蔵」、「信濃」の3艦である。
記憶では4艦だと思っていたのだが4艦目は戦況の悪化により建造されていなかった。
「信濃」は途中で設計変更され航空母艦として竣工した。

大和型の戦艦は旧日本海軍の大艦巨砲主義を具現化した世界最大級の戦艦。
本作で描かれているように所有することに酔いしれ浮沈神話を生み、今も日本人の心に世界最大級の、いや最強の戦艦として認識され続けている。
主人公が言うように「製造してはいけない戦艦」だったのかも知れない。

真珠湾攻撃をさかのぼること数年、欧米列強との軋轢が深まる中、海軍は巨大戦艦の建造予算獲得に躍起になっていた。
当時はワシントン軍縮会議(1922年)からロンドン軍縮会議において、新たなる建造艦について厳しく制限を受けていた。
まぁ、現在の米国とロシアの核軍縮条約のようなものだ。
これに海軍は大きな不満を抱いている中での巨大戦艦建造計画であることを理解しておくと、ラストの平山海軍造船中将の言葉が、よく理解できると思う。
その平山中将から提出された巨大戦艦の建造費が8900百万円。

一方、これからの海戦は大艦巨砲によるものではなく、航空機を活用した起動戦力がものをいうという説を取る山本五十六。
彼らはそのための新型空母建造を提案するが、建造費は9300万円。
このままでは巨大戦艦建造に予算が取られてしまう。
そもそも装備も重厚で鉄の使用量も多い巨大戦艦が空母より安い費用で建造できるというのは、どう考えてもおかしい。
山本五十六たちは、そのカラクリを暴こうと一人の天才数学者を召喚する。
果たして彼は決められた時間内にカラクリを暴き、巨大戦艦の建造を止めることができるのか?という流れが第一幕である。

どうも大学をクビになった若者が、いきなり少佐でというのは無理があるなぁ。
と思ったら漫画が原作なんだ。
まぁ、創作上はやむを得ないか。

さて本作、ある意味では大どんでん返しの第二幕がある。
山本五十六らは、天才数学者の必死の努力で巨大戦艦の建造阻止に成功する。
まぁ、その方法論も漫画的で…笑止千万と笑ってしまった。
鉄の使用量から戦艦建造費を推定ではなく言い当てるという、まさに漫画。
これには笑った。

あっ、どんでん返しは、そのことではない。
さすがに、この論理展開は笑止千万、予算会議の趨勢までは変えられなかった。
だが、平山中将は主人公に設計ミスを指摘される。
それは暴風雨への強度問題。
数字は忘れてしまったが、数百年に一度の台風が発生し風速50mになったとき、艦は荒れ狂う波に耐えられず沈没するという。
この設計ミスを指摘された平山中将は潔く事案を取り下げ、巨大戦艦建造は白紙撤回となる。
メエタシ、メデタシ…違う!大和は建造された。

ここで問題なのは、平山中将の潔さの描写が、田中泯のイメージと演技におんぶにだっこになっていることだろう。
もう少し、彼の人間性や思想を描いておかないと、ラストに広げる大風呂敷が空虚に響いてしまって損をしていると思う。

平山中将は自案が白紙になったところで主人公を呼び出し、こう告げる。
「この巨大戦艦は建造しなければならない。戦艦の有無は戦争遂行には無関係だ。軍は必ず米国と一戦交える。そして負ける。負ける象徴が、巨大で日本国民の妄想を包み込むほどの美しい戦艦が、その時は必要になるのだ。負けた後の心の支えとして」

こうして主人公は巨大戦艦の設計ミスを是正し、大和と命名された巨大戦艦は沖縄戦に向かう途中で米空軍の機動部隊によって撃沈される。
それが冒頭のシーン。
出撃を見送るラストに主人公が「僕には、あの艦が日本国そのものに見える」という台詞、そしてそれを聞いた部下が「まさに日本の未来を象徴しています」と笑う姿が、二人の思いのすれ違いを表している。
このシーンを活かすためにも平山中将のキャラクターは、正しく描かれるべきだ。

しかし…
菅田将暉の演技は青いな。
精進して、よい俳優を目指してほしいものだ。
妻が「舘ひろしが老けた」と呟いていた。
そりゃぁ、そうだな。

橋爪功が巨大戦艦の縮小モデルを見ながらはしゃぐ姿は、当時の日本人の感覚を的確に表しているのかと思うと考えさせられるな。
大艦巨砲主義が、もはや海戦において意味をなさなくなりつつあることを論理ではなく空気で粉砕するエネルギーの源泉を見ることができる。
こういう徒輩(やから)を冷静に論破する技術と、それを受け入れる文化、空気ではなく論理を優先する冷静さが戦争においては肝要であることを知らされる。
まぁ、本作のテーマではない。
言い過ぎかもしれないが、本作にさほどのテーマ性はないように思う。

それにしても…
菅田将暉と浜辺美波、ちょっと艶っぽいシーンがあってもよかった。
ん?、性根がハリウッド映画に浸食されたかな…

アルキメデスの大戦 DVD 通常版 - 菅田将暉, 柄本佑, 浜辺美波, 笑福亭鶴瓶, 小林克也, 小日向文世, 國村隼, 橋爪功, 田中泯, 舘ひろし, 山崎貴
アルキメデスの大戦 DVD 通常版 - 菅田将暉, 柄本佑, 浜辺美波, 笑福亭鶴瓶, 小林克也, 小日向文世, 國村隼, 橋爪功, 田中泯, 舘ひろし, 山崎貴

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この記事へのコメント

  • ごろー。

    ぼくも見ましたよ。
    実は、ぼくの叔父さんがまさしく造船技術少佐で、武蔵の建造に携わりました。
    そして、血はつながっていませんが、やはり親類の方が大和の測距士で戦死されています。
    ちなみに、ともに沖縄水上特攻作戦に参加した駆逐艦「雪風」の佛坂軍医長もぼくの叔父さんです。
    そういう立場の目で見ると、あの映画で語られる台詞の多くが実に腹立たしい。
    「負ける象徴が、巨大で日本国民の妄想を包み込むほどの美しい戦艦が、その時は必要になるのだ。負けた後の心の支えとして」。
    それは後出しの論理ですよ。
    まだ二十代後半で亡くなった親戚のおじさんは、そんなくだらない美名のために命をささげたわけじゃないと思いました。
    まだね、いけしゃーしゃーと大和って、日本人が作った世界最高の戦艦だったんだよね、くらい言ってほしかったですね。
    2021年03月26日 23:21
  • gatten-shochi


    >ごろー。さん

     私の周囲には戦争を語る人物はいませんでした。
    大正生まれの父親も徴兵検査でNGだったらしく…
    それすらも本人から聞いた話ではありません。
    高校時代に特攻の生き残りという工業簿記の先生が、授業を脱線すると生々しく語っていましたが、その程度です。
    生まれも経済白書が「もはや戦後ではない」と宣言した年ですので、戦争は本の中の文字でしか知りません。
    なるほど「後出しじゃんけん」
    娯楽映画の目線としては面白いかなと思ったのですが…

    橋爪功が巨大戦艦の縮小モデルを見ながらはしゃぐ姿と、予算獲得の会議での発言が危ない日本人を描写しているように思いました。
    そこを掘り下げてたほうが反戦色の強い作品になったかもしれません。
    2021年03月27日 20:43