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【BD鑑賞】パリの灯は遠く

パリの灯は遠く
 制作年  1976年
 監督   ジョセフ・ロージー
 出演   アラン・ドロン、ジャンヌ・モロー、
      シュザンヌ・フロン、ミシェル・オーモン、
      マッシモ・ジロッティほか
 劇場公開 1977年9月
 録画日  BD形式 2017年7月17日
 鑑賞年月 BD鑑賞 2021年1月


 最初の印象。
アラン・ドロンらしくないかも…であった。
次に思ったのは、ユメ落ち?違うよなぁであった。
でも真実とすれば、ちょっとヤバイかもしれない。
個人が、その属する社会で何者であるかは意外に脆弱なものなのかも知れない。

物語の舞台はナチス占領下のフランス、パリ。
ナチスに追われる多くのユダヤ人は国外に逃れるため財産を整理していた。
そんな彼らの足元を見るかのように二速三文で絵画を買いたたく画商のロベール。
アラン・ドロンが演じると、どこか怪しげな画商にしか見えない。
けっこういい暮らしだし、女も囲っているようだし…
もしかすると隠れユダヤで、ナチスと金でつながっていて同胞から憎まれている?
そんな想像をたくましくしてみたけれど…アラン・ドロンの容姿でユダヤはないかと思いなおし、さてどんなサスペンスになるのやら?
あるいは邦題からすると悲しい反戦映画になるのか?
パリは燃えているか(1966年)」と同系統?
いやいや、まったく違う話だった。

 ある日、いつものように絵画を買いたたき「近頃は売りたい人が多くて困っているんですよ」などと軽口をたたきながら、老紳士を玄関に促すと…
そこにはユダヤ人向けの広報誌の案内が届いていた。
ロベールは手紙を拾い上げ、老紳士に「落とし物かな?あなたのでは?」と手渡そうとするが、老紳士は「宛先はあなただ」と言って去ってゆく。
ロベールは生粋のフランス人であり、友人関係にもユダヤ人はいない。
何かの間違いだろうと広報誌の発行元を訪ね間違いであることを伝えるのだが…

実は冒頭に老婦人の身体検査の様子が描かれる。
医師が老婦人の口、鼻、臀部など身体を即物的に計測している。
その手つきは、まるで家畜や動物を扱う仕草と変わない。
アインシュタインの誘惑 いのちの優劣 ナチス知られざる科学者(2017年)」で描かれていたが、優生学の間違った解釈(?)が悪用されユダヤ人は遺伝的に劣性と判断(診断?)され、彼らの生殖能力を奪うことが人類にとって有意義だと考えられていた時代のことである。
それがナチスによって拡大解釈され、ユダヤ人排除の科学的な根拠として大いに利用されたのだが、冒頭のシーンはナチスだけのことか?と思いたくなる。
欧米人には、根本的に他民族を動物以下に見る文化的な素養があるのでは?と疑ってしまうような、ちょっと恐ろしいシーン。
この冒頭のシーンのおかげでロベールが「自分がユダヤ人と間違われてしまった場合」の恐怖を観客は共有することになるのだが…

ところが物語は、その恐怖を棚上げにしてサスペンス的に展開する。
どうやらロベールをユダヤ人に仕立て上げたヤツがいる!
そいつを自ら調べ始めるのだが…
なんで?
ここあたりのロベールの心情というかロジックが分かりにくい。
本作の難点の一つかな。

その誰かを追い詰めながらも警察はロベールがユダヤ人ではないかと疑い、彼の逮捕に向けて動き出し始める。
お決まりの愛人(ジャンヌ・モロー)が登場したり、その男のアパートの女性管理人やら恋人らしき人物も絡んで、益々ロベールはもう一人の自分探しにのめりこんでゆくのだが、観客には徐々に「ロベールはパラノイアでは?」と疑いが芽生える。
でも、そうだとすると愛人や女性管理人、恋人の言葉や存在が妄想になるのでは?
そう悶々と考えが浮かんでは消え、消えては浮かぶようになる。
このつくりは、なかなか巧いものだ。

そして遂にロベールはユダヤ人を狩る暴動に巻き込まれてしまう。
そこにもう一人の自分らしき人物を発見(したと思い)、追いかけるのだが…
その先に待っていたのは強制収容所行の列車だった…
うむむ、このラストは、一瞬ユメ落ちかとも思ったけれど…

本作、あからさまにホロコーストを批判しているわけではない。
観ようによってはロベールの「俺は生粋のフランス人」という、占領下においての呑気なまでの自国意識を批判しているのかもしれない。
ナチスが何をしようとフランス人の俺には無関係という呑気さ。
そのロベールが、ふとしたことでユダヤ人ではないことを証明できないことに。
身体検査を受ければよいのかもしrないが、ロベールはその実態を知っている。
だから誇り高きフランス人として(人間如何に扱われるのは)受容しない。
そう、冒頭のシーンの身体検査が、非人道的なことをロベールは知っている。
にも拘わらず彼は「俺は生粋のフランス人」と呑気に構えていた。
その態度が傲慢であると、本作は言っている…ような気がした。

だから本作のラストには恐怖がある。
ユメ落ちではない…

パリの灯は遠く [Blu-ray] - アラン・ドロン, ジャン=ルイ・トランティニャン, クローディーヌ・オージェ, ジャック・ドレー
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