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【Netflix鑑賞】浮草

浮草
 制昨年  1959年
 監督   小津安二郎
 出演   中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、
      野添ひとみ、笠智衆、三井弘次、田中春男、入江洋吉ほか
 劇場公開 1959年11月
 鑑賞年月 Netflix鑑賞 2020年11月


 Netflixのメニューを見ながら(作品紹介画像)、「おっ、京マチ子!」と思って鑑賞することにした。
始まって「あらま、監督は小津安二郎か」と京マチ子のチマチマ話は厭だなと思ったような気がする。
あの妖艶さでチマチマと嫁入り話か後家さん話で登場されてもなぁ…
まぁ、そこまで思ったかどうかは忘れたけれど…

始まるとすぐ、小津構図の風景が目に飛び込んでくる。
いや、風景だけじゃない。
例の妙なカメラ目線ではないカメラポーズでの対話など、カメラ構図的には全編小津監督節の炸裂である。
観ていて安心感はあるのだが…
本作、いつもほど安心感が感じられない、
それは物語のせいもあるだろうが、京マチ子、若尾文子という女優たちの演技力が大きいのではないかと思う。
いい意味で小津映画なのに刺激的なのである。

 旅回りの一座が、ある地方の港に到着する。
世話になっている小屋の代表が笠智衆。
常連俳優さん、今回は端役だな。

本作は、監督自身のセルフリメイク作品である。
笠智衆はオリジナルにも出演しているらしいが、観たことはないので確認できない。
サイレント映画だそうである。

代表に挨拶も済ませ芝居の準備に、一座のメンバーは大忙し。
村人(?)たちへの宣伝風景が、どこか懐かしく思える。
実際に、こんな風景を体験した覚えはないのだが…
小学校の頃の、お祭りのサーカスやお化け屋敷が似ているのかもしれないなぁ。

実は一座が、この地を訪れるのには訳があった。
この地には、座長の駒十郎がその昔にもうけた子供が母親と一緒に暮らしている。
定期的に訪れては、息子の成長を見守ってきたのだが…
現在の連れ合いのすみ子(京マチ子)が、これをよく思わず…

こういう三角関係のもつれ的な男女関係を描くのは珍しいのではないか?
しかもすみ子は行動力があり、母親のお芳(杉村春子)にイヤミを言いに彼女の店におしかけたり、駒十郎と大喧嘩したりする。
道を挟んで二人が罵り合う場面は、本作の見どころの一つだろう。
例によって構図は小津アングル。
関西弁で交代で罵り合うシーンは、小津節炸裂の名場面だが…
どうも、現実はこうではないよな…という思いも捨てきれない。

その後、すみ子は一座の若手女優の加代に小遣いを渡してお芳の息子を誘惑させる。
この息子を川口浩が演じているのだが、若すぎて認識できず。
ところが彼らは純粋に恋愛関係になるのだけれど…
うーん、せっかく奇麗どころの若尾文子を使っているのだから、もう少し刺激的なキスシーンが欲しいところだなぁ。
小津監督には無理か…

ここでチマチマ物語に華を添えるテーマがあるように思う。
それは駒十郎が芝居を生業にしている自分やすみ子、加代を卑下していることだ。
だから息子には正体を明かさず、お芳の兄、伯父として接している。
前述した道を挟んだすみ子との口論でも「息子は、お前たちとは人種が違う」と、加代を誘惑させたすみ子を罵っている。

それが駒十郎のお芳たち親子に対する思いなのである。
芝居などという浮かれた商売を生業にする自分とは違って、ちゃんとした、世間に恥ずかしくない大人になって欲しいという願いなのであるが…
この屈折した思いは、どこからきたものか?
駒十郎の人生を想像するのが、妙に楽しくなる。

一座は客入りの悪さに愛想をつかした役者の一人が、金を持ち逃げしたため解散。
駆け落ちした加代は、駒十郎の価値観と同じことを息子に言う。
「だから私は、あなたとは釣り合わない」
うん、やっぱり、ここが大事なところだな。

駒十郎、一座を解散した後、お芳のところに戻り「息子に父であることを打ち明け、親子三人で仲良く暮らそう」と話し合うのだが…
そこへ加代を連れて息子が戻ってくる。
母親に二人の仲を許してもらおうとするのだが…
息子と加代は人種が違うと思っている駒十郎が二人を罵倒する。
お芳が駒十郎が自負であることを明かすが、「違う人種」という価値観を認めない息子は「今更、身勝手すぎる」と言い放つ。
ふむ、いつもの小津節より熱い流れだ。

駒十郎は息子の言い分に納得したのか、再び旅に出ることに。
浮草が流れに身を任すがごとくすみ子も現れ、
二人は連れ立って桑名に向かうのだった…

このエンディングで一座のチマチマ物語は幕引きとなる。
いつになく男女の感情のもつれが巧く表現されているように感じた。
これは、やっぱり京マチ子の存在感あふれる演技効果だと思う。
杉村春子の飄々としながらも、一本筋の通った母親の味わいも捨てがたい。
若尾文子は、もう少し若さを前面に出した演出をして欲しかったな。

浮草 4Kデジタル復元版 Blu-ray - 中村鴈治郎(二代目), 京マチ子, 若尾文子, 小津安二郎
浮草 4Kデジタル復元版 Blu-ray - 中村鴈治郎(二代目), 京マチ子, 若尾文子, 小津安二郎

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