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【DVD鑑賞】赤線地帯

赤線地帯
 制作年  1956年
 監督   溝口健二
 出演   京マチ子、若尾文子、木暮実千代、三益愛子、川上康子、
      進藤英太郎、沢村貞子、浦辺粂子、多々良純、加東大介ほか
 劇場公開 1956年3月
 録画日  DVD形式 2019年9月30日
 鑑賞年月 DVD鑑賞 2020年9月


 京マチ子を狙っての鑑賞。
もう一つ、監督が溝口健二だったことも動機かなぁ。
もっとも2017年、駅裏のミニシアターで開催された「溝口健二&増村保造映画祭/変貌する女たち」では上映されていなかったので、やっぱり京マチ子狙いだろう。

赤線というのは、GHQによる公娼廃止指令(1946年)から、売春防止法の施行(1958年)までの間に、半ば公認で売春が行われていた地域のことを言う。
そのことで、とても印象的な思い出がある。
昭和49年5月のことだ。
入社した会社で1ヶ月の工場実習が終わり実際に勤務する職場へ配属された。
配属先でも一週間の教育があったのだが、最後の日ではなかったかと思うが、とある課長さんが「今日はね、僕が講師になんだけれど、本来の担当者が急用ができてね、臨時なので何を話すのか、よく分からないんだ。これまでで疑問や質問はある?」
同期入社のB君と、モジモジしていると…
今では、とんでもない話になるのかもしれないが、「君たち、たばこは吸わないの?吸っても構わないよ、社会人なんだから」と言うのでビックリ仰天。
いや、もう半世紀近く前の話だから時効だろうが、高卒入社の自分たちは未成年。
確かに喫煙はしていたけれど、公の場ではさすがに遠慮していた。
B君が「そうですか、では」と吸い始めたので自分も吸うことに。

そのあとの言葉が、さらに驚きだった。
その課長さん、「君たちは何年生まれ?」と訊いてきた。
「昭和31年です」と応えた。
たまたま二人とも同じ年の同じ月生まれだった。
「あっ、そう。じゃぁ、赤線なんて知らないんだ」と、逆に驚いたような素振り。
細かいことは忘れてしまったが、課長さんの赤線話が披露された。

昔は、そういう習慣があったらしいが、翌年に新たに配属となった先輩のO氏、ボーナス後に呑んだ時「ごめんな、先輩なのにトルコに連れて行ってやれなくて。給料安くなっちゃってさ。このパブで我慢してよ」と言われ、奢ってくれた。
確かに、オイルショックの後で会社は暫く大変だったけれど…
当時は、先輩が後輩の筆おろしの面倒を見る習慣があったのか?

 さて本作。
そんな売春防止法案が国会で審議されている頃、吉原の「夢の里」という娼館で働く娼婦たちの悲喜こもごもの日常を描く物語である。
実に生活感のある描写で面白かった。
若い女だけではなく年増の女性もいて現実感がある。

・より江(町田博子)
 普通の主婦に憧れているが…
・ハナエ(木暮実千代)
 病気の夫(たぶん結核だろうなぁ)と幼子を抱えて、一家の家計を支えている。
・ゆめ子(三益愛子)
 一人息子を育てるため田舎から出稼ぎに来ており、息子との同居を夢見ている。
・やすみ(若尾文子)
 客を騙して金を貯め、仲間の娼婦に金貸しを行って将来に備えていた。
・ミッキー(京マチ子)
 神戸のいいところのお嬢だが父親と揉めて「夢の里」へやってきた不良娘。

 一見、華やかな「夢の里」だったが…
売春禁止法が廃案になった国会中継を聴いて「夢の里」の主人(進藤英太郎)が、台詞がたち業者のおかげだぞ。お前たちのことを一番よく分かっているのは俺たちだ。俺たちが国に代わってお前たちに職場を提供しているんだ。慈善事業なんだ」とまくし立てるのが、まぁ、当時の娼館の経営者たちの本音なんだろうと妙に納得。
納得と言えば、「夢の里」の女将(沢村貞子)の台詞も。
「ウチは300年も続いてるんだよ。四の五の言っても、それだけ長く続くってことは世の中に必要とされている商売ってことよ」も、風俗営業の本質を突いている。
まぁ、台詞はうろ覚えなので正確ではない。

より江、結婚するも身分(?)の違いから早々に夫婦生活が破綻、戻ってくる。
結婚祝いの時、皆が「幸せになるんだよ、戻ってきちゃ駄目よ」と言うのだが、ミッキーだけは「どうせダメになるから、その時はこれで戻っておいで」と汽車の切符を渡すシーンがあり、後の父親とのことを思うとさもありなん。

ハナエの夫は将来を悲観して自殺未遂を起こす。
妻に負担をかけ、しかもその商売が身体を売ることでは、死にたくもなるだろう。
しかし、女は強い。
「いつかこの苦労も笑い話になる」と生き抜くよう夫を説得するのだ。

ゆめ子のケースが一番切ないかも。
息子から「もう会わないで欲しい」と売春を生業としている母を嫌い絶縁宣言。
まぁ、気持ちは分かるがなぁ…育ててもらった恩もあるじゃないの。
でも自分だったらどうだろう。
おそらく当時は左翼が「売春なんて人間のやることじゃない!」と告解で吠えまくっていたことだろうから、思春期の若者的にはなぁ…
就職したて、中卒だろうなぁ、時代的には。
でも、もっと切ないのは息子からの絶縁宣言でプッツン切れたゆめ子は、心も切れてしまって精神病院へ…
あったかもしれないなぁ、こういうことって。

ミッキー、神戸でモメていた父親が迎えにやってくるのだが…
妹の縁談話が持ち上がって、世間体を考えてのこと。
どうやら父親は大会社の社長か役員。
好き勝手し放題でミッキーとモメていたようだ。
「あちことに女を作ってお母さんを苦しめたんでしょ!あたしは苦しまない。神戸の娼館にも女がいるんでしょ。吉原でも遊んでいけば!あたしが相手をするワ」と叫びながら父親に迫る。

そんな中、やすみは騙した客に恨みを買って殺されそうになる。
しかし、ちゃっかり貯めた金で足を洗って「夢の里」に出入りする貸布団屋の女主人に納まり堅気の商売へ鞍替えした。
7さぁ!廃案になった売春禁止法、商売、商売!
新たに下働きのしず子(川上康子)が勤めに出る事になり、着物を換え、妖艶化粧を施され、男たちの袖を引く他の娼婦たちに交じってためらいながらも道行く男に誘いの声をかけるのだった。

京マチ子と若尾文子が素晴らしい。
ヤンキー風の京マチ子は、風貌とは違い情に厚いオンナという感じ。
しかも、とびっきりの美人である。
若尾文子は和風で清楚な感じだが、実は一番計算高いちゃっかり女である。
綺麗だが、京マチ子が一枚上手だな…個人の好みの問題か、

公開話題になったのは、三益愛子が大年増の娼婦を演じたことだそうである。
そりゃ、そうだろうなぁ。
ぼんやりとした記憶では三益愛子って、「よいお母さん」という感じだった。
まぁ、テレビでしか見たことはないけれど…

いやいや、なんとも風情のある(高尚ではないけれど)映画だなぁ。
公開当時はオジサン、お兄さん、消えた赤線を懐かしみながら鑑賞したのだろうか?
含蓄のある作品ではあるが、これって男子目線かな。
 
赤線地帯 4K デジタル修復版 Blu-ray - 京マチ子, 若尾文子, 木暮実千代, 溝口健二
赤線地帯 4K デジタル修復版 Blu-ray - 京マチ子, 若尾文子, 木暮実千代, 溝口健二

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